患者を選ぶ

 「患者を選ぶ」というと「医者としてあるまじき行為」と思われる方もいると思うのですが、最近は医療機関が患者さんを選ばれているなと思うことがちょいちょいあります。福祉施設もしかりです。経営という側面からも職員管理という側面からも、負荷が大きすぎる患者さん、利用者さんは断りたいのはよくわかります。

 

 負荷が大きすぎるとは、手がかかるともいえるし、要求が多いともいえるでしょう。順番を待つとか、自分に与えられた時間の範囲でとか、とりあえず相談してみて考えるとか、大人として相手のことを考えた行動ができない人が増えてる気がします。

 

 一つは、地震の後いろんな支援者に手厚く接してもらい、スタンダードが上がってしまったこともあると思います。「被災者は多少わがままいってもいい」と周りが許してしまったわけです。もちろん大人のわきまえがある人は、それが一時的なことと理解して、日常的なスタンダードに戻りますが、地震前から不満がある人は居心地のいいところから離れたがれません。

 

 医療機関では、地震からしばらく患者増で大変だったと聞きました。しばらくの期間、被災者は医療費の負担なしで治療できるということで、「たいしたこと」なくても受診する人が増えたとか。現場のドクターや看護師さんたちは、本来治療すべき患者さんたちに充てられる時間が減ってジレンマを抱えていたそうです。

 

 特に精神科の受診者が増えて、手がかかる患者さんの受け入れを渋られるところも多いです。精神科は特に患者さんとドクターの信頼関係がないと診療が進まないという部分が大きく、また患者さんが「病気のため」なのかドクターの指示に従いづらい方がけっこうな数いらっしゃいます。新規受け入れの際、これまで受診した病院での治療歴を聞かれることがありますが、トラブルで治療中断している患者さんは新規で受け入れてもらえる病院を探すのも大変!

 

 患者さんが自分で治療の選択肢を減らしていることを自覚せずに、医者が悪いと考え出すと、もう負のループをぐるぐる回り始めるしかありません。

 

 こうなったら、その現実を患者さんがちゃんと受け止めて、行動を改善してもらうしかありません。どこの医療機関もたくさんの患者さんを治療しているわけで、一人の患者さんに手間暇かけているわけにもいかないし、こういう患者さんは治療者をメンタルダウンに追い込んでしまうこともあり、歓迎されない患者だと自分でわかってもらうしかないのかと思っています。

 

 とある県の精神センターの職員さんと話していて、「そういう人は失敗を繰り返し社会的制裁をうけることで自分自身を振り返り改善していってもらう、というのも一つの治療だと思う」と言っていただき、ちょっとスッキリしました。なにもかも病気のせいにして、治療してくれない医療機関の悪口をいうことで責任転嫁していることに気づいてもらうことも、私たちの仕事なんでしょうね。