支援の必要性に気づかない夫婦

 この2年ほど、地震で自宅を失った方の伴走支援をしています。具体的には仮設住宅からの転居支援ですが、新しく建設するのか中古を買うのか、あるいは借りるのか、大きくはこの3つに分類されますが、決めて行動に移すまでに時間がかかる方がけっこういらっしゃいます。

 私たちが支援している方々は、費用面だけでなく家族内の課題、社会性の課題、病気や障害など複層的な課題をもっている方で、何を優先して手を付けていくのか、どのような支援策を活用するのかを整理提案して、一緒に手続きを進めていくことになります。

 自分だけではできないから他人の手をかりようと思ってくださると私たちも進めやすいのですが、支援を拒否されると退去期限までに行き先が用意できない事態になってしまいます。

 伴走支援をしている中で、とあるご夫婦の抱えている課題がかなり深刻であることがわかってきました。仮設住宅で家賃が不要であることを考えれば、夫の収入で生活が十分にできる世帯と思われましたが、給料前にはお金が底をつきスマホのクレジット機能で買い物をする状態でした。まずは家計の見直しということで、無駄を見つけようということになったのですが、コンビニでの買い物やアルコール、たばこ、そして高額な光熱水費は減らすことができませんでした。

 収入をあげるために妻がパート就労を始めても赤字は変わりません。むしろ車をローンで購入したことでさらに家計は悪化です。でも、この車は家族にとって明るい未来のシンボルでもあるのです。そして、妻が見つけた転居先の家賃は、世帯収入に見合うものではありません。そのことを説明しても気持ちは変わらず、将来的な破綻が目に見えているのに何も手を施すことができません。

 なぜなら、夫婦ともに判断能力が十分ではないようなのです。夫は、自分は外で働くのが役割でそれ以外は妻の役割といって家計は妻に任せっぱなし、一緒に考えることをしてくれません。妻はおそらく軽度の知的障害と人格障害をもっていらっしゃると思われ、都合の悪いことは回避します。

 支援者側としては、妻の障害年金の受給と障がい者枠での就労がこの夫婦の安定的な生活の基盤になるとして療育手帳の申請と年金請求について説明しますが、妻は自分に障害があることは認められません。おそらくは過去に嫌な思い出があり障がい者であることを受け止められないのだと思います。

 転居された後も連絡を取ろうとしましたが拒否的で、しばらく間が空いて訪問したところ、ドアの郵便差込口にチラシやフリーペーパーがたまってました。駐車場に車はなく、ドアの向こうから応答もありません。事務所に帰って電話をかけると「使用されてない」とのアナウンス。嫌な予感がします。

 もしかしたらかなり厳しい状況なのかもしれません。しかしこれは本人たちに理解してもらういい機会になるかもしれません。週明けに関係者と連絡をとり、再度しっかり支援の連携をつくらないといけないようです。

 家族にキーパーソンがいないケースでは支援がなかなか進みません。